2022年8月の日記

・2022.08.31

不安定な天気、あと数時間でいいから一日の時間が伸びてほしいと願いながらひたすらに仕事。慌てて夕飯を食べようと思って、にんにくをレンジに入れてあっためていたらぼんやりしていて煙が立っていた。わたしはレンジと相性悪い、絶対。右腕にある消えない火傷の跡もレンジにやられたものだし。焦げた香りが過去の悲しみを無駄に連れてきて、涙が出てくる。絶望的な気持ちになっていたら生理がきて、悲しみを生理のせいにできて少し気持ちが落ち着いた。

me and you clubで詩や短歌について話す会。斉藤倫さんの『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみみがおとなになるまえの詩集』をあげている人が何人かいて、わたしも読もうと思った。まだ読んでいなかったとしても、見ていなかったとしても、していなかったとしても、何かを読みたい、見たい、したい、と思えるということ自体にだいぶ救われる。わたしは笹井宏之さんの話をしたけれど、もっとこういうふうに伝えられたらよかった、など後でうじうじ考えていた。

・2022.08.30

ずっと忙しい日々が続いていて、できていないことばかりで(もちろんできていることもあるのだけれど、そっちにばかり頭が持ってかれる)、疲れない頭と身体がほしい。夜、何もできなくなってしまってベッドに寝っ転がりながらひたすらプレイリストにいいなあと思う音楽を入れていた。好きなんじゃない、と言われて聴いたNINAのRESUSという曲が好きだった。あとはMoontypeというシカゴのバンドが出した去年のアルバムが改めてすごく好きでたくさん聴いている。好きな音楽について、何かもっとその好きをどうにかしたいのになかなかできていないなと思ったりしている。

・2022.08.29

一気に涼しくてちょっとうれしい。一日に何度も「涼しくてうれしい」と言ってしまった。今年の夏は夏が嫌いになってしまうんじゃないかと思うほどだめで、だいたいずっとばてていた気がする。中華街でこの間買ったミルクパンのようなお菓子に牛乳をつけて食べて、昼はこのあいだポルトガル食材店で買ったマッサというパプリカを使った調味料でパスタ。気を抜くと一番近くにあるまいばすけっとに売っている、最適化された最低限の食材や調味料でいいやという気分になってしまうけれど、いつもと違った味は頭にいい感じに風穴をあけてくれる。

夜、晃生に借りてた郡司ペギオ幸夫さんの『やってくる』を読み終えた。認識と感覚のずれ、デジャヴュについて考えることが多いのですごく面白かった。トラックパッドで描いたゆるゆるの絵もたまらない。現実は不確実なもの、知覚できないけれど存在するものがどこかからやってくるのを待ち構えていたい。ミルクパンやマッサを食べながら。

・2022.08.28

快快のコーリングユーを観に、KAATへ。だいぶ久しぶり。快快の作品はずっと観たいと思っていたのになぜか観たことがなくて、この作品が初めて。鈴木志郎康さんのことは去年知って、家にある『どんどん詩を書いちゃえで詩を書いた』という本の存在感がすごくてずっと気になっていたのと、大道寺梨乃さんの映画が気になっていて、ごちかさんが編集されてる「分担とパッチワークのフェミニズム──パフォーミングアーツと女性のライフステージ」という記事を読んでさらに気になっていたこと、テンテンコさんが出ることなどが重なって即予約した。

鈴木志郎康さん、詩というものに対する大きなリスペクトのなかで動いていく作品。わたしというものの存在、つながっていない電話の受話器に呼びかける声、嘘のきゃーとほんとのきゃー。ここにいるわたしから、ここにいないあなたへも届くかもしれないという希望のような気持ちが湧いた。あるいは逆でも。演劇はたまにしか観なくて、もっと観に行きたいと思っているけれど、観に行くたびに身体で受け取ったような感覚を覚える。高橋くんにあった。

KAATと中華街ってこんなに近かったのか。中華街は何度も行ったことがあるけれど、裏道をうろうろするのは初めて。まわり続けていたパンダの人形は来年もまわり続けてるのかな。

・2022.08.27

イメフォで『WANDA』を観た。すごく好きな映画だった。自分には何の価値もない、何もない、そういう気持ちに駆られることがある。ずっとうっすら自信がなく、卑屈なこの状態がつくられたのは、一体何のせいなんだろう?自信がない状態だと、たとえどんなことでも褒められるとうれしくなるし、依存してしまう。そういうことがわたしにもあったから、ワンダと自分を重ねながら見ていた。自分の足で歩いていけないというときに、「自分で自分の道をすっくと歩いていきなさい、わがままでいいのだから」というメッセージは、救いになるときもあるけれど、場合によっては自分を苦しめるときもある。最近たまにそういうことを感じる。ある程度の自信を持ち合わせながら、自分というものをしっかりと持ち、それを突き通すことができる女性しか許されないのか?と。襲ってきた男から逃げて走るワンダのあの目が忘れられない。いろんな女性の映画が観たいな、と思ったし、強気でわがままでいられない女性のこともわたしは肯定したい。filmarksにすごく好きなレビューがあって、スクショした。

夜、家に帰ってから『愛の不時着』をちょっとだけ観た。おもしろそうだけれど主人公がどうにも好きになれない。もうちょっと続けて観たら変わるのだろうか。何かの話の拍子にくるりの『青い空』のMVを見て胸が張り裂けそうになった。1999年、11歳だったのか。

・2022.08.26

早起きして仕事。夜は晃生とマリカと一緒に浴衣を着て、夏の思い出にと楽しみにしていた大江戸まつり盆踊り大会に。亡くなったおばあちゃんが自分で簡単につけれるようにつくってくれた帯をぎゅっと締める。小学生のときに着てた浴衣、意外とまだ着れるんだな。時間を越えたような気持ちになる。盆踊りの、ループを繰り返して、少しずつ揃っていく感じが気持ちよさを感じる。マスクしてるから超暑くて汗だくになったけれど気持ちよかった。近くの居酒屋で飲んで、写真撮って帰った。そのあといろいろあって、深夜1時にgoogle meetを立ち上げた。話せてよかったと思う。

・2022.08.25

ゆめさんの家で発送作業三日目。日記は書けず。

・2022.08.24

ゆめさんの家で発送作業二日目。昔はこういうふうに朝早く出掛けて夜家に帰っていたのだった。ひさしくリモートワークをしているからとても新鮮。

・2022.08.23

ゆめさんの家でme and youの本の発送作業。みんなでいろんな話をした。

・2022.08.22

朝ゆみこさんとアイ溶けの収録で話していて、終わったあと涙が溢れてしまった。ここ最近ずっと「わたしには何もないかも」モードが強まっていたからこそ、というのもあったかもしれない。気を抜くとそのモードに落ちてしまうのはもう自分の習性として仕方がないことかもしれないけれど、一人ひとりが自分にしかできないことを持っているのだということを忘れずにいたい。

夜は清水晶子さんとの収録。「フェミニズムは楽しい!」という言葉に元気をもらう。話すことで力をもらうということを実感する一日だった。

・2022.08.21

喫茶店に行って読書をして、掃除グッズを買って家に帰り、あとはひたすらゆっくりしていた。インスタを開いたらパティ・スミスがアニメ『文豪ストレイドッグス』を日本酒を飲みながら見てて何これ最高じゃんとなった。なぜかパティ・スミスはアニメを見ないんじゃないかという気がしていたけれどそれも勝手なことで、みんないろんな面があるんだよなあ言ってないだけで、と思うとなんだか救われる。わたしのこのテキトーな日曜日も全然いいのでは?という気分になった。

・2022.08.20

神奈川近代美術館のアレック・ソスの展示を観に、葉山へ。電車に揺られながらちょこちょこ読み進めていた山崎まどかさんの『真似のできない女たち』を読み終わる。移動のときの読書って特に記憶に残ってる気がする。さまざまな時代を生きた、さまざまな女たち。もしかしたら全部が全部かっこよかったり、人から讃えられるような日々ではないかもしれないけれど、それぞれの生き方で生き延びている。そういう物語にもっと触れたい。あとがきのまどかさんの言葉が、車窓から見える風景とともに何度も思い出されそう。

展示は素晴らしかった。アメリカの資本主義社会からドロップアウトして社会から隠れて暮らす人たち、一方でコミュニティを大切にしながら生きる市井の人たち。場所と記憶、自然と人間、プロジェクトを遂行すること…まだ散らばっているけれど、大切に考えていきたいいくつものことを受け取った気がする。メモやノートなどがたくさん添えられた『Gathered Leaves Annotated』を抱えて帰る。夏休みにゆっくり読もう。

・2022.08.19

濃密な夢と共に目覚めた。夜、えりさんとひさしぶりにごはん。ゆめさんと三人で。昔、この三人で台湾に行ったけれど、あれからもう何年経ったんだろう。airbnbで宿を借りて、台北のTHE WALLでシャムキャッツとsunset rollercoasterのライブを観た。台南の古着屋さんをやっている子たちと仲良くなって、今もインスタで繋がってる。なぜか酔っ払って台北の居酒屋で飲みながら泣いてたよね、とか話してた。前が見えなくてとにかく闇雲に働いていた頃、あの頃CINRAで過ごした日々は思い返しても一番の青春だったと感じる。今日も人生のこと未来のこといろいろ話していたけど、あの頃を共にした人たちとはずっとこれからの話をし続けたいなあと思う。

・2022.08.18

ここ最近SNSをほぼ見なくなったけれど、元気があるときは粛々と差別的な発言をするアカウントのツイート報告活動をしている。地味な活動だけれど昔からずっとやっている中でたまに報告が返ってくるので、効き目は少しはあるのかもしれない。言論の自由がある、という言葉とともに差別的な言動を肯定しそこに存在している人を傷つける「有識者」の存在に悲しくなる。

夜は夏にやってみたいことについて話す会。近所のプールに出掛けてばかりだったけれど、いろんな場所のプールに行ってみたいな。

・2022.08.17

仕事の合間をぬって、アイコとお茶。原宿に資生堂パーラーできたの知らなかった。パフェを食べながら、なぜわたしたちはこんなにうじうじと悩んでしまうのだろうかと話す。元気が出た。調子が悪いときに、その話をただ受け入れてやさしい言葉をかけてくれる友人の存在に本当に支えられてる。だいぶ高い階にいたのにハトのような鳥が窓ガラスの側に止まっていて、こんなに高く飛べたんだねえと驚いた。

2022.08.16

「地図の土地名前が途中からから漫画」というメモが残ってる。すごい夢を見て、興奮して半分寝ている状態のときに書いたけれど、「漫画」ではなくおそらく「モンゴル」と書きたかったんだと思われる。地図を開くたびにどんどん違う国に進んでいける身体になっていて、モンゴルとフィンランドに行ったことを覚えている。かすかに何回か目覚めたけれど続きが見たくて二度寝も三度寝もしたのはひさしぶり。仕事中もその高揚感を引きずっていた。最近ゼルダの伝説をやっていてオープンワールドをあちこち歩き回ってたことが絶対影響している。あとは旅行に行きたい欲だろうなあ。

・2022.08.15

終戦記念日。テレビに映る戦争に関する番組を見ながら、おばあちゃんと会えなくなる前にもっとその頃の話を聞いておけばよかったと思う。夜は代官山蔦屋で黄身子さんとのトークイベント。いろんな感情があっていいし、関係性があっていいということを描き続けている黄身子さんの言葉はどれも優しくて、とても癒される時間。話すことが得意ではない、という意識がいつまで経っても拭えないからトークイベントはいつも緊張するけれど、終わった後のうれしい気持ちは他にかえられなくて、ここ最近呼んでいただくことが多くてうれしかったな。

・2022.08.14

この日の日記はme and youのニュースレターに書きました。

・2022.08.13

台風がやってくるなか、あゆちゃんサリーちゃんと朝ごはん。雨雲レーダーを見て、あと何分後はちょうど雨雲がいないから家に帰るチャンスかもね、と言いながら結局話すのが楽しくって、昼くらいまで話してた。街が変わっていくことや、記憶の話。わたしは覚えることへの苦手意識がずっとある。自分がそう思っているだけでなく、誰かから忘れていることについて残念に思われた経験もある。そうやってどんどん忘れていってしまうのが怖いから、記録することに執着してるのかもな。話しながらそのことを考えていた。

見たい展示があったけれど、台風がくるから家でじっとしてた。最近読み始めたばかりのジェニー・オデルの『何もしない』のタイトルが目に入るたびに「何もしないをやろう」という気持ちになれていい。机にずっと置いておいたほうがいいのかも。あと何分あったらあれができるのに、とか、みんなはこういうふうに時間を使ってるのに、とかそういう考えから逃げ出して、ほんとはめいっぱい時間を無駄にしたい。あんまりやることを決めずに、思うがままに過ごしていたらだいぶ気持ちが回復してきて、何かをやりたいなという気持ちが芽生えてきた。

夜21時くらいに家を出て、イメージフォーラムへ。Heavenlyを聴きながら。風はだいぶ強いけど雨はほとんど降ってなくて、涼しくて気持ちがいい。『マイ・シークレット・ワールド』のトークに呼んでもらって、チコさんと初めてお会いした。グッチーズの二人も優しくて、トークの前後も含めてうれしい時間。この映画もまた、やりたいことをやっていいんだよという気持ちを思い出させてくれる映画で、配給したいという気持ちからサラ・レコーズに連絡をしたというチコさんとの話からも力をもらった。あといつまでもやっぱり音楽を好きでいたいし、いるんだろうなとも思った。いただいた夙川クッキーローゼと『アザー・ミュージック』のトートを抱えて帰宅。

・2022.08.12

昨日一日休んだらだいぶ回復して、今日も休むことにした。好きなことが好きだと思える感じが少しずつ戻ってきた感じがする。本も読めるようになってきた。夜、2年ぶりくらいに会う大切な人たちとごはん。じわりと幸せな時間だった。なかなか行かない街に行ったのもよかった、帰りの電車でだいぶ酔いがまわってしまい眠りについた記憶がない。

・2022.08.11

この日の日記はme and youのニュースレターに書きました。

・2022.08.01〜10

このあたりはずっと心身の調子があまりよくなかった。たのしかったりうれしかったりする瞬間もいろいろあったけれど、だいたいがぎりぎりの状態だったので特に何も書いていなかった。ここではない個人的な日記に書いてあることはいろいろあるけれど、公開している場所に何かを書きたいなと思う気持ちになれかったから、特に何も書かないでおく。

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