
韓国ぶりの海外。去年はなかなか夏休みという夏休みをとれなかったので、2025年は絶対に休もうと決めていた。私のような立場の人間が休んではいけない、となにか勝手に雁字搦めにしてしまっていた気がする。休んではいけない人なんてどこにもいないのに。
ロンドンで暮らす友人と、アムステルダムで暮らす友人に会いに行こうとだいぶ前から計画して、あとはポルトに行ってみたいということで、3つの国に訪れるための移動手段と宿だけとって、何も決めずに向かった。
ロンドンは私にとって特別な場所だ。なぜなら10代の頃から留学や旅行でたびたび訪れているけれど、毎回くすぶった気持ちを抱えて旅立ち、帰る頃にはその先どうやって生きていこうかな、という回答がざっくり見えているから。若い頃からのたまたまの経験の積み重ねから、なにか大きく悩んだときにはロンドンに行くようにしている。前回訪れたのは30歳か31歳の、コロナ禍直前だった。
さまざまな仕事が重なって、休むために数ヶ月土日フルで働き続ける必要があったため、思った以上に身体も心もぼろぼろになってしまい、かなりぎりぎりの状況で成田空港へ。ずっと溜めていたマイルやポイントを活用したり(溜めているのが意外だと言われるが、お得なの大好き)、比較的安めの航空券を販売しているキャセイパシフィック航空で、香港経由でロンドンに向かう。


空から見た香港が、あまりにも美しかった。数時間乗り継ぎで待つため、空港をぶらぶらする。MONOCLEがあった。アキオが煙草を吸うというので喫煙できるガーデンのような場所に出たら、湿気と煙草の匂いが充満していて、勝手に香港映画みたい、とわくわくした。入国審査などをせずに香港の空を感じられてうれしい。チェックイン後に外の空気が吸える空港、もっとあったらいいのに。

キャセイパシフィックはごはんもおいしく快適だった。高度35,000フィートの上空で最高の味となるように醸造されたクラフトビール「ベッツィービール」もある。


ヒースロー空港に到着し、エリザベスラインでWhite Chapelの駅へ。はじめの宿は、White ChapelにあるIbis Hotelのお手頃版。全体的に学生寮みたいな雰囲気で、なんだか懐かしい。都市に泊まるときはホテルの値段を抑えたくて、でもベッドはきれいなのがよくて、安心のIbisを選択した。

White Chapel Galleryには訪れたことがあったけど、泊まるのは初めて。ホテルの隣にはモスクがあり、バングラデシュ系コミュニティが広がっている。今回の旅のあいだ、イギリスの移民文化をあらためて肌で感じたかったというのもあった。私がロンドンに訪れるたびに気持ちが楽になるのは、さまざまな人種の人たち、見た目もさまざまで、話す言語もさまざまな人たちが当たり前に街にいること、というのもあるから。
もちろんイギリスの歴史についてそこまで詳しくない私も、この国が植民地支配を行ってきた帝国であり、移民受け入れと制限を繰り返してきた国だということを知っている。そのうえで、日本はちょうど参院選を終え、排外主義的な言説が広がっている最中で、そのことに本当にしんどさを感じていた。そして私はいま、生まれ育った国ではない場所で暮らすこと、さまざまな事情のもと外国で暮らす人たちのことが、自分のなかで最も大きい関心になってきているというのがあった。理由はいくつもあって、世界で起きている戦争や虐殺、日本の社会情勢のほか、さまざまな国で暮らす・国から来た友人が増えたこと、それに加えて私のルーツとも少し関係していて、またそれは別のときにどこかに書きたい。
そうしたことから、技能実習生や入管など国としての制度に綻びがある日本と、イギリスはあらためてどのように異なり、どのように重なっているのか、歩きながら感じたかった、というのも旅の密かな目的だった。そしてちょうどこの文章を書いている今、ロンドンで大規模な反移民デモが起きてしまっている。


駅前にはムスリムの人たちのマーケットが広がり、ヒジャブを被った女性たちもたくさん歩いている。お店もハラルのお店だったり、国旗ショップみたいなのもあった。マネキンもPALESTINEショールを羽織っている。あちこちにプロテストのチラシが貼られていたのも印象的だった。
チラシの一つは「KICK THE RACISTS OUT OF LONDON」。8月2日、難民の人たちの宿泊者となっているThistle City Barbican Hotelの前で反移民を標榜するデモが行われるため、それに抵抗するためのデモへの呼びかけのチラシだった。これは大々的にニュースになり、読むとかなり差別的な発言も飛び交っている。一方で、反差別で集まった人々は反対派のデモ参加者をはるかに超えたそうだ(Pro- and anti-migrant protesters face off at London hotel housing asylum seekers)。
もう一つは「SAVE DOMESTIC VIOLENCE SUPPORT SERVICE」。WhitechapelがあるTower Hamletsという区は、ロンドンで家庭内暴力事件の発生件数が2番目に多い自治区だそうだ。女性と少女の3人に1人が、ジェンダーに基づく暴力を経験しているらしい。しかし、慈善団体「Solace Women’s Aid」の独立家庭内暴力アドバイザー(IDVA)の人員削減案が出ており、それに対するストライキが行われ、抗議する人が数百人集まったそうだ(Solace Women’s Aid workers set to strike to save Tower Hamlets’ domestic abuse support services)。
とにかく、このまちではデモやストライキは当たり前で、テレビをつけるとしょっちゅうデモのニュースが流れている。反移民の立場の人もたしかに多いが、反差別で声を上げる人の声もすごく多い。関心がない人はいないのではないか、と思うほど。今回はほぼずっとイーストサイドにいたこともあったからか、街中から、あるいは話す人たち一人ひとりから、差別に抵抗するという意志を絶え間なく感じていた。日本にいるとき以上に。
Whitechapelのドラッグストアで足りないものを買ったとき、こんな話をした。「この辺りの学生?」「旅行で来てるよ」「そうなんだ。どこから来たの?あ、日本人でしょ」「わかるの!お〜!」「僕の出身はどこだと思う?」「うーん?」「パキスタンだよ」


Whitechapelから少し歩けばストリートアートで溢れ、古着屋などもたくさんあるShoreditchもある。ここからここはこう、と区切られているわけではなく、なだらかに繋がっていて、いろんな顔を覗かせる。ちょうど、BIRD ON THE WIREの広告が貼られていた。8月のところに、今週行く予定のRALLY Festivalも書かれている。本当はMJ Lenderman & The Windのライブも行きたかった!

ロンドン病院の前に気持ちがいいパブがあって、昼からビールを飲む。Good Samaritan Pubというお店。看板にもドクターがいた。ロンドン病院の職員が訪れたり、患者が軽く一杯飲みにきたりするらしい。このサイト、昔ながらのパブのリストがまとまっててよい。



わかりやすくフィッシュ&チップスも。幸せすぎていままでこんな笑顔なことあったか? ってほど笑顔になった。ビールはビーバータウン・ネックオイル・セッションIPA。これ一番好きだった。


平日の昼、大人が真剣に卓球勝負をしている。


旅で壁に書かれたグラフィティや、貼られたフライヤーを見るのが好きだ。だいたいどこの国でも歩けば見つかるし、調べると普段の検索ではたどり着かなかったようなものにたどり着く。
今回の旅では、どこに行っても数歩歩けば「Free Palestine」の文字が見つかった。「GAZA FUNDRAISER」と書かれたのは、ガザに募金するために一日中開催されたレイヴのお知らせ。Rave2Raiseという団体がVoices Radioと共に行っていて、これまで£14174(280万円くらい)寄付したそう。元労働党党首であるジェレミー・コービンも支持を示している(Jeremy Corbyn backs Rave2Raise event for Gaza with Manuka Honey, L-Vis 1990, Manni Dee, more)。コービン氏は、反移民を掲げる右派ポピュリスト政党「リフォームUK」に対抗する選択肢をつくるため、新党をつくろうとしているそうだ。8月には原水爆禁止世界大会に参加するために日本に訪れ、共産党の志位さんと話していた。



girlie-pop party、QRでInstagramアカウントを見たらガーリーポップなお洋服のポップアップイベントのようだった。近くには「ANIMAL LIBERATION HUMAN LIBERATION」と描かれたポスター。
その側には「SAVE BRICK LANE!」と書かれている。まさに古着屋さんやマーケット、バングラデシュ料理屋などが立ち並ぶ賑やかなエリアで、かつでレンガ工場があったことからこう呼ばれているそうだ。トルーマン醸造所がここにショッピングモールとオフィスビルを建設しようとしていることへのメッセージで、Websiteには、「企業主導型の開発に拒否する」というメッセージや、異議申し立ての方法が明確に記載されていた。1666年に設立され、18世紀以降拡張を続け、住宅街をも飲み込み、広大な敷地を占めるようになったトルーマン。巨大資本と市民たちの戦いがどのような動きを見せるのかとても気になる(Truman Brewery v Save Brick Lane: What you need to know about the campaign to save the East End as we know it)。
そもそも日本だと、ここまでそこらへんの壁にフライヤーが貼られていない。政党のポスター、議員のでっかい顔が出ているポスターはめっちゃ貼られてるのに……。これってよく考えたら結構シュールだ。公共空間へのポスター・ステッカーは原則禁止で、でも地元議員は許可をもらってポスターを貼る。歩きながら、公共空間で政治的なメッセージを見かけるということが日本ではいかに少ないかについて考えていた。


サンシャインフォーユー!政治的じゃなくても、こういうメッセージもあちらこちらに溢れている。
そのあと、とりあえず買い物しよう、ということで散策。お店もいろいろ行った。ロンドンで一番大きなヴィンテージストアだというAtika Londonは掘り出すのが楽しいのとめちゃ安い。食べ物はこんなに高いのに、古着は£30(6000円)とかで買えちゃう。横にあったQuatriemeもかわいかった。人懐っこい猫もいるヴィンテージショップCRABIのセレクト、すごく好きだった。


GOODHOODというセレクトショップにふらりと入ったら、ネオンのオブジェに「敷石の下は砂浜」と日本語で書かれていた。五月革命のスローガンがなぜか日本語で書かれている。あちこちで日本語を見かけた。Superdry(極度乾燥しなさい)は知っていたけど、こんなにもあるのか。
付近にある書店、Libreriaは、棚のかたちがユニークで小さいけど開放感がある。ちょっと忘れちゃったけど、オリジナルのカテゴリーもたのしかった。ロンドンで今柚木麻子さんの『BUTTER』が大人気のようで、訪れた本屋さんすべてでメイン棚に置かれていた。この本屋さんでは八木詠美さんの『休館日の彼女たち』もフィーチャーされていた。
Rough Trade行ったりして、初日はおしまい。何日かまとめて書こうと思っていたけれど2日目のことは次の記事で書きます。