北海道/函館・江差旅行記(1日目)(2024.10)

北海道に行きたかったのは、母がしばしばその話をしていたからだった。自分の祖先がどういうふうに過ごしてきたのかしばしば私に伝えてくる母の話を、以前はまともに聞いてこなかったけれど、ここ数年、祖母が辿ってきた人生や過ごしてきた時代について考える中で、急にあれこれと興味が出てきた。

わたしは東京出身で、母も東京出身。父も同様なので、いつも自分にとって帰る故郷は東京以外に特にないと思っていた。でも、その先を辿ると母方の曽祖父母たちはそれぞれ北海道で暮らしていた時期があることがわかった。母の父方の祖父は江差生まれで、その父は江差の町長だったという。また母もその流れでもともと函館に本籍があったようで、ゆかりを感じ、行ってみたくなった。

札幌には何回か行ってるし、小さい頃に小樽には行った記憶はあるけれど、道南と呼ばれるエリアには行ったことがなかった。北海道によく行っているという友人、あゆみさんが「10月にまた行こうと思ってるよ〜」と言うから、わたしも行くことに。ずっと行ってみたかった江差にも車で連れて行ってもらうことになった。運転ができない身なので本当にありがたい…。

飛行機と悩んだけれど、新幹線で函館へ。東京駅から意外と4時間程度で到着する。新幹線は仕事がはかどる場所でもあるので、熱中して作業をしていたら青函トンネルを通っていることにまったく気づかず、あっというまに函館に到着。知らないあいだに、海を通っていたのか。

平日の昼間の函館駅付近はとても静かだった。この日は涼しくて、でも思ったよりも寒くはない。もっと薄着でもよかったかも。比較的新し目の、屋根が平らで低層の建物が並ぶ。スピーカーから「社会を明るくする活動をしています」「裁判の相談費用はかかりません」という音声が流れる。道を走る路面電車。この風景、何かを思い出すなあと思ったら、フィンランドのヘルシンキだった。

ホテルにチェックインして、あゆみさんは打ち合わせがあるということで歴史的な町並みが残る西部地区に向かった。

ちょうど日が暮れる時間。1860年に建てられたというロシア正教会の聖堂「函館ハリストス正教会」のまわりにたくさんの鳥が飛んでいた。さまざまな宗派の教会や神社があちこちに点在する。

木々の隙間から覗く景色の美しさ。雪が積もる頃にも行きたい、とふと思う。やっぱりGLAYのwinter, againが脳内で流れるね。

海をのぞむ坂道。同じく写真を撮ろうとしている旅行客の人と並んで景色の写真を撮っていたら、自分の記念写真を撮ってほしいと頼まれた。はいチーズ、がいいのか、1,2,3がいいのか、やや悩む。私もお願いします、と言おうかと思ったけれど、恥ずかしくなってしまい諦める。

函館山にのぼるロープウェイは風の調子のせいか早めに終了していて、登れなかった。母におすすめされていたから、登りたかったのだけれど。

坂を下っていき、函館市北方民族資料館へ。もともとは北海道にはアイヌの人々が暮らしていて、15世紀頃から本州から和人が移住し、勢力を拡大していった。そこから言語や文化が禁止されたりと、日本からすると「開拓」と呼んでいるそれは、植民地化であり侵略の歴史でもあった、ということを忘れてはいけないし、もっと知っていかなくては、と切に思う。私の曽祖父母たちも明治維新の北海道開拓の流れのなかで事業をしていたのだと思うのだと、なおさら。

東京で暮らしていると、アイヌについて知りたいというときに本くらいしか手に取れないから、北海道に点在するアイヌに関する資料館を少しずつ巡っていきたいな。

建物は大正15年に建築された日本銀行函館支店を用いていて、建物を見るのもおもしろい。さまざまな場所に説明書きがついていて、ドアを閉めるレトロなドアクローザーにまでどこの製品なのか書かれている。何の製品かわからなかった館長がメールでメーカーに問い合わせ「解決しました〜!」という説明も貼ってあったりして、愛が深い。

函館駅の方に戻って、寿司食べたい、と思い立つ。回転寿司にしようかな?と思ったけれど、ちょうど通りすがった「さかえ寿司」へ。ビールを飲みつつ、お通しのイカの塩辛と蛸の柔らか煮。おいしい。日本海側で食べる海産物がだいすきだ。お寿司とお味噌汁をいただていると、あゆみさんから「瀧澤商店にいるよ」という連絡があり、合流。

昔ながらの角打ち。瓶ビールをちょっといただき、ブラックニッカのハイボールを。すっきりしてておいしい。お隣の方たちが食べていたゆで卵がおいしそうで注文する。殻を水平にきれいに割ってくださり、そこに醤油をちょっとだけたらしてくれた。あゆみさんの友達で函館で暮らしている阿部さんとも合流。お店の常連さんたちや店主の方からも函館の歴史について伺う。街への愛が深い方がたくさんいるのだな、函館は、と思う。

あゆみさんが予約してくれていたハッコーバーへ。大門地区の菊水小路という細い路地にある飲み屋さんで、生産者の顔が見える食材にこだわっているお店だそう。お店の詩織さんがパワフルでとても素敵な方で…🦀のイラストが描かれたハッピーアワー(たしか1500円)を注文したら、好きなお酒に加え蟹一杯と落花生などなどが出てきてびっくりした。新生姜の炊き込みご飯もおいしかった。甲羅酒もやらせてもらった。

お酒もいろいろあってもっと飲みたかったけれど、ここ最近の体調がそこまで優れなかったため少しだけ飲んで今日は終わり。明日は江差へ向かう。

韓国ソウル旅行記(2023.9)

2023年9月18日〜20日まで、アキオと二人で韓国・ソウルに行った。18歳のときに友達と3人で行ったぶりだから、17年ぶりくらい。そして海外に行くのは、コロナ禍に入る前にロンドンとマルタに行った一人旅ぶり。これまでは1,2年に1回は日本を出ていたと思うから、だいぶひさしぶりだった。

今回はすごくお得なプランを見つけて、2泊3日、ホテルと航空券込みで1人48000円程度で行くことができた。古いデジカメで写真を撮ったんだけど(流行ってるよね)、なんだか街の雰囲気と写真の雰囲気がぴったり合っていて、そのときの感じがうまく残った感じがする。

ひさびさの成田空港、LCCのエアソウルで仁川空港へ。飛行機のなかで、ハン・ガンの『少年が来る』を読んでいた。

空港かっこいいなあ。流れるようなフォルムに差し込む光が美しい。旅客ターミナルはイギリスの建築家テリー・ファレルの設計だそうだ。

高速鉄道のKTXで、ソウル市内に向かう。

嘘みたいに大きな太陽!

韓国の地下鉄は「WOWPASS」というカードを買うとすごく便利に乗ることができた。両替機能がついている機械を使って、円をそのままカードにチャージできるんだけれど、そのカードで電車にも乗れるし、お店でクレジットカードのように使うこともできる。駅を歩いていると本の無人貸し出しサービス(スマートライブラリーというらしい)もあって、いいサービスだなあと思った。今回は行けなかったけれど、ソウルには魅力的な図書館もたくさんあるみたい。

ホテルは明洞のロッテ百貨店の目の前にあるイビスアンバサダーホテル。結構夜も深まってたので、近くのオリーブヤングでいろいろコスメを買ってて、大韓コプチャンというお店でコプチャンを食べ、路地をうろついた。明洞は日本人旅行客も多いしきらきらした場所だけれど、少し歩くと雰囲気がいい路地もあっておもしろい。

地元の人が行くような飲み屋に行きたいなと思って適当に入ったお店、もう閉店しそうだったみたいで店員さんがいなかったけれど、飲み会をしていた3人のおじさんがそこ座っていきなよ、と手招きしてくれた。結局その店には入れず、もう少し遅くまでやってそうなチキンのお店へ。おなかいっぱいだからチキンは食べれず、cassの生ビールとイカなどの燻製の盛り合わせを食べる。韓国のcassビールはさっぱりしていて飲みやすい。居酒屋で頼んだものはなにかとお皿が大きい。

二日目の朝。旅行に行くとだいたい散歩をして気になったところにふらっと入るのが好きで、特にしっかりとプランを決めていなかったのだけれど、朝は市場を散歩してみたいなと思ってバスで広蔵市場へ向かうことにした。

この地下道にあったお店、渋くて気になった。韓国語がわからないので、ここまでディープなお店はまだ入る勇気がない……

だんだん問屋街みたいな雰囲気に。この建物に入っていた居酒屋もとても気になる。入る勇気はまだない。少しでも韓国語が話せたらなあ。

この川をぼんやりと見ていたら、通りかかったおじさんに韓国語で話しかけられて、わたしたち韓国語がわからなくて…と言うと「この通りはきれいでいいデートスポットです」と教えてくれて、それを伝えようとしてくれていたのか、とうれしい気持ちで溢れる。

市場はパワフルな女性たちがたくさん働いていた。通りかかったチヂミのお店で緑豆チヂミを食べる。飲んでいたアイスコーヒーにもぴったり合って、素朴な味でおいしい。

近くの世運商店街へ。1968年に建てられた国内初の住商複合施設らしく、電気機器などの専門店などが立ち並んでいた。上のほうから見るソウルの街は、古い建物の密集地と大量の高層ビルが非常に近い位置で隣接して見えたのが印象的に残っている。スピードの速いソウルの姿を眺めることができる場所だと感じた。

電車に乗って、景福宮のほうへ。このへんは美術館やギャラリー、ショップなども多いみたい。本当はまわってみたい美術館や博物館などがいっぱいあったけれど、時間もないのでぷらぷらと散歩して気になるところに入ってみることにする。

GALLERY HYUNDAIというギャラリーでSung Neung Kyungというアーティストの個展をやっていたので入ってみたけれど、すごくよかった。現在80歳の著名なコンセプチュアルアーティストだそうで、1969年〜80年に韓国で活動した実験芸術集団「Space & Time」のメンバーだそう。当時、軍事独裁政権下で、検閲を受けていた新聞を使った作品が印象に残っている。くり抜かれた新聞。読んでいた『少年が来る』で描かれた時代と重なった。日刊紙の「English Review」ページを使ったコラージュ作品、扇子を燃やすパフォーマンス、「境界」が印象的な写真の作品。急速に変化する韓国の社会が目の前に立ち上がるような作品たち。グッゲンハイム美術館でも、彼をはじめさまざまな韓国の実験芸術作家の展覧会をやっているみたい。

そのあと、そばにあったKUMHO MUSEUM OF ARTで、若手作家の合同展「A GLIMPSE OF OUR TIME」。資本主義が加速し、スピーディでデジタル化された社会で生きていくことに対する批評的な作品が多く、ゆったりと見られるいいギャラリーだった。

ずっとオンラインで購入していたAMOMENTOにも行った。こちらはセレクトのほうで、オリジナルのみを扱ったお店も別の場所にあった。眺望がよいカフェも併設されている。AMOMENTOのセレクトがずっと大好きで、日本でもできたらいいなあという気持ちもありつつ、韓国にだけあってほしいという気持ちもある…

少し場所を移動して、新村のあたりを散歩。行きたかった古着屋さんはお休みだった。韓国、数歩歩くと全然違う景色が広がっているのがおもしろい。ALLWRITEという文房具のお店へ。店主の方が飼っている猫の写真に「MAKI」と書いてあって、聞いたら「俺物語!!」の真希からとったそう。韓国はかわいい文房具屋さんがたくさん。

韓国は石造りの建造物が多いそう。旅行で一番たのしい時間は、何気ない風景の色の違いを見たりするときかも。

なんかライブとか見たいなと思って、弘大へ。Gimbab Recordsはさまざまなインディミュージシャンの来韓公演のオーガナイズもしているそう。Spincoasterにオーナーのインタビューが載ってておもしろかった。ライブハウスのstrange fruitはこの日は何のライブもやってなかったけれど、ライブハウスのお姉さんが「このへんでクラブに行くならここがいいよ!」と教えてくれた。

Modeciというクラブで、その日はMNDSGNのDJセット。屋上があって、全然きらびやかではない屋上でだらだら飲むのがすごくよかった。グレーの空、遠くに見える高層ビル、いい音楽とおいしいお酒。横にいた韓国人の男の子たちと映画の話などをした。何語で話したのかは全然覚えていない。タクシーでホテルに帰った。

翌日、めっちゃひどい二日酔い。近くで冷麺を食べて、空港に向かった。あっというまのソウル旅。わたしは韓国のアイドルにも詳しくないし、本などもたくさん読めれているわけではないけれど、韓国のファッションやデザイン、インディ音楽シーンについてはずっと関心があって、自分なりにいろいろ調べたりしていきたいな。次はチャン・リュルの映画の舞台にもなった慶州に行こうと思っている。