2022年3月の日記

・2022.03.31

朝、天気がよかったので公園で仕事。まだ生まれたての桜の木を見たのは初めてだったかもしれない。大きな木に育った頃にはわたしはこの世界にいないのだろうと思うと不思議。公園のカフェでGia Margaretが流れていて、それもよかった。銀行に行って、印鑑を眺めながら、亡くなった祖母の苗字のことを考えていた。娘しかいなかった祖母の苗字は美しくて好きだった、幼い頃わたしは女だから継げるわけがない、と思いこんでいたことに、このときやっと気がついて、女だからという理由で消えていくさまざまなものたちがその美しい苗字の印象とともに頭に浮かんだ。

・2022.03.30

外で仕事。眠くて帰宅後寝てしまった。春だからか。

・2022.03.29

休み明けでばたばたと仕事、夜は六本木で収録。

・2022.03.28

飲みすぎてあんまり眠れず朦朧としてしまっていて、車でぐっすり眠ってふと目覚めたら海沿いに満開の桜。そのまま不安定な道をどんどん登っていき、なんにもない高原に出た。人も建物も何も見えなくて、生命力が強そうな草木が生い茂る向こう側に、静かな海が見える。狭い場所にいると自分のことでいっぱいになってしまうけれど、こんなにも広大な場所に身を置くと、やっと自分は世界の本当に些細な一部であるということを信じられる。とっておきの場所を教えてもらえてうれしかった。江之浦測候所に立ち寄って、眠気とともに黄色い菜の花の間を歩く。この付近には関東大震災の津波で流されてしまった駅があるらしい。海の見えるテラスで、ここでいま生きていることが奇跡に感じる、という話をした。旅行の帰り道に高速から反射する光が眩しくって、給油のために立ち寄るガソリンスタンドでしか感じられない感情ってあるよなあと思った。

・2022.03.27

友人たちと箱根一泊旅行。車出してどこか行くのとかだいぶ久しぶりで昨日の夜はあまりよく眠れなかった。ポーラ美術館でロニ・ホーン展、会期終了間近ということで賑わっていて、会いたかった人ともすれ違ったみたい。詩の朗読の映像が特に記憶に残っている、水という誰もが触れるとても普遍的なものから、わたしやあなたや、そのもっと向こう側へと広がっていく、ロニ・ホーンの思想と静かに向き合うような時間。ファスビンダーの引用や、作品に書き込まれたリディア・デイヴィスのこと。アイスランドはいつか行きたい場所で、Google Mapにはたくさんピンをたてている。きっと行くんだろうと思う場所。ひとつの場所に通い続けるという経験はまだしていなくて、そういうときがきたらいい、という思いがより強くなった。霧が立ち込める旅館はロニ・ホーンの作品の延長にあるみたいで、夜通し「コードネーム」というカードゲームをして、気づくと2時を過ぎていた。

・2022.03.26

映画や展示に行く予定をカレンダーにぎゅうぎゅうに詰めていたけれど、やり残していた作業の方が心残りで一日中ずっと仕事。やり終えてだいぶ気持ちがいい。

・2022.03.25

またあまりにもリアルな夢を見てしまって、夢に関する本を買った。夜は近所に住む彼の友人が来客、深夜までいろいろ話しておもしろかったけどまあまあ酔っ払っていたので何を話していたかは覚えていない。深夜に購入したイオンのキャラメルアイスクリームが外国のアイスみたいな味がしておいしかった。

・2022.03.24

なかなか熱狂できないことについて朝だらだら話していた。まっすぐに渦の中に飛び込むことができないところが自分にはあって、熱狂に対してすごく憧れる気持ちが湧くときもあれば、そういう自分もいいなと思うときもある。夜は女子校の話。12年も女子校いたけれど、女子校についてまだ自分のなかであまり考えがまとまっていないように感じる。

・2022.03.23

この日の日記はme and youのニュースレターに書きました。

・2022.03.22

先日の震災のこともあり、電力不足で停電するというニュース。Twitterを見ると、この機に際して原発推進を呼びかけるツイートも見かける。いろんな意見があってはいいと思うものの、ある著名とされている「有識者」の人のツイートにげんなりして、布団のなかでその人のタイムラインを遡っていると時間はどんどん過ぎていく。都心に出ると、こんなに街を照らさなくていいんじゃないかといつも思う。なのに、夜景のきらめきは美しくてやっぱりいいなとも思ってしまう。矛盾ばっかりだ。

仕事のメールのやりとりの中で、天気のことを知るのが好きだ。わたしの部屋の窓はすりガラスで、窓を閉じていると外の様子がはっきりわからない。雪が降ってましたね、というメールを見て、ベランダに出てみたけれど、わたしの街ではまだ降っていなかった。

・2022.3.21

代々木公園であすかさんとピクニック。あすかさんと話すといつも心強い。もやっと考えていたことについていろいろ話した。代々木公園を覆っていたオレンジ色のネットは少しずつ少なくなっている気がする。なぜか、代々木公園に来た日のことは一日一日鮮明に覚えてる。どの木のそばにいたかも含めて。

HOUGAの展示会に滑り込み。萌さんは大学のゼミが一緒で、以前から展示会に行きたかったから楽しみにしていた。HOUGAの服は不思議なかたちをしている。波打っていたり、どう着るの?という形をしていたり。シンプルなフォルムの服が好きで似合うと思っていたわたしは、素敵だけれど似合わないかも、とおずおず試着した。すると自分の身体と合わさってまた新しい形になって、すごくかわいくて。走り出したくなるような軽さもあって、ほかにはない魅力があるブランド。いろんなしがらみから抜け出させてくれる服。

・2022.3.20

今日みたいに少しストップする日がわたしには必要で、昼寝をして何か生まれ変わったような気分になった。ひたすらに、昔聴いていた曲を聴いたり、歌ったり。この間行ったラーメン屋はイエモンばっか流れてたよ、という話をして、たしかめにラーメン食べに行ったらやっぱりイエモンが流れてた。メイドの手帖見終わって寂しくて、Sharon Van Ettenをずっと聴いてる。

・2022.3.19

朝風呂で堅田香緒里さんの『生きるためのフェミニズムパンとバラと反資本主義』を読み終えた。フェミニズムの本であり、複雑に交差する差別や特権について目を向ける本でもあった。自分自身の特権や、無意識に抱えていた差別意識が浮き彫りになる。でもそうやってひとつひとつ無視せずに自覚していくことが小さいけれど大切なことだと思う。

あたたかい日、喜多見のbeet eatでカレーを食べて、PLAIN STOCKで古着のリーバイスのジーンズを買った。スタンダードなジーンズ買ったのとかいつぶりだろう。10年ぶりとかかもしれない。自信持って似合っている、と思えてほっとする。似合わないと拒絶していたものを取り返していく作業、これからも負けじと続けていく。

マリカちゃんとごはん。いっぱい話した。深いところまでゆっくりと潜っていくような時間。アキオがいるっていうので新宿にタクシーで移動してゴールデン街の西瓜糖へ。はくるさんひさしぶり、お店は相変わらず大勢のお客さんで賑わっていた。

・2022.3.18

あわあわと日常が過ぎていき、なかなか今社会で何が起きているのかわかっていない状態だったけれど、ニュースをゆっくり見る時間をとることができた。ウクライナのこと、この間の震災のこと。6月の『FESTIVAL FRUEZINHO 2022』、Sam Gendel&Sam Wilkesに坂本慎太郎。Bruno Pernadasもceroも楽しみで即チケットとった。海外アーティストの来日ライブをいつもたのしみにしていたけれど久しく行っていなかったから、えー来日するの!と驚いた。夜、のぞみんとももちゃんと中華食べて、久々カラオケ。aikoの「ストロー」が頭から離れない。

・2022.3.17

税理士さんとの打ち合わせをしていて、会社を始めてもうすぐ1年経つことを実感した。お金まわりのことはまだわからないことだらけだけれど、お金はただの数字じゃなくて気持ちにも変わるし、時間ともつながっている。そう思うと、わたしたちみたいに小さな会社でもどういう姿勢でお金と向き合っているかが本当に大事なことだと感じている。資本主義社会に対する疑問を持ちながら会社を経営していくことについて、頭の中でふわっと考えていることをもう少し言葉にしておきたい、来年度は。

・2022.3.16

夜はme and you clubのはじまりのイベント。数日落ち込みがちだったけれど、このイベントがあったことでだいぶ救われた。Zoomの使い方に戸惑いかなりパニックになってしまったけれど、多くの人が助けてくれて優しい世界だった。イベント終了後、激しい揺れがあって、携帯を見たら宮城・福島で震度6強。

・2022.3.15

頭が痛くてすべてに対して悲観的な気持ちでおそらくPMSのせい。

・2022.3.14

考えが足りなかった、と思うことが多くて自己嫌悪が重なった一日だった。こういう日は心も身体もすべてそういうモードになっちゃっているから、おとなしくしているに限る。

・2022.3.13

髪、伸ばしてたけどばっさり切ってショートに。担当の亀井さんが切ります、といったとたんにざくざく切りはじめてておもしろかった。この人は本当に髪を切るのが好きなんだな。夜、bunkamuraでみんなで『寝ても覚めても』を観た。昔観たときは朝子の行動が理解できず、気持ちがぶんぶん振り回されていたけれど、二回目だからなのか、月日が経ってから見るからなのか、3.11を境にした変化や、相容れない二つの感情を同時に抱える朝子の気持ちが印象的だった。後から海外のタイトルは『Asako I & II』だということを知って、このタイトルを知るとまた違った見え方をするなと思った。

・2022.3.12

りおちゃんと神楽坂でごはん、その後目黒シネマで『リトル・ガール』と『トムボーイ』の二本立て。二本立てとか久しぶりだった。リトル・ガールは先にパンフレットを観ていて(このパンフレットがとてもすばらしい)、ずっと観たかったから特にうれしい。バレエ教室のロシア人教師が最後までサシャのことを理解しようとせずにしていたことについて、ぎざぎざした気持ちが残り続けている。トムボーイはすごく美しい映画だったけれど、終わりかたについて思うところがあって観た人と話したい。

・2022.3.11

この日の日記はme and youのニュースレターに書きました。

・2022.3.10

朝は昨日インターネットのことについて考えていた延長で、UbuWebを見ていた。1996年に詩人ケネス・ゴールドスミスによって作られた前衛芸術にまつわるさまざまな資料が保存されているサイト。前からなんとなく知っていたけれどじっくり見たことはなかったのかもしれなくて、大量のサウンドアートや映像の一部を見て、作品はもちろんだけどこれらにすぐにアクセスできるということに感動した。その中にある、200人以上の人による音声の寄稿によって作られている365 Days Projectを見て、好きという気持ちが溢れてしまった。Learning to Love You Moreといい、強く心惹かれるものには共通しているものがあるなと感じる。

知らなかったとある映画監督による、性加害のニュース。つらくて読み進めることができなかった。

・2022.3.9

晴れてあったかかったので久々朝の公園へ。相変わらず誰もいない、だだっぴらい広場に寝転んで太陽を浴びていると生きているなあと感じる。この感じ忘れかけてた。

スペクテイターのパソコンとヒッピーの号を読み進めている。今わたしがこの日記を書くのに使っているパーソナルコンピューターというもの自体、それまで戦争などで使われてきたコンピューターを個人が使えるようにしたものであって、一方で今は個人がコンピュータを使って書きこむことが世界を動かすことさえあるということに未だに慣れない。小学生の頃、パソコンオタクであることをひた隠しにしていたわたしは、ハイパーテキストという概念に感動していた。あれから20年経った今、わたしは何かのリンクを辿ってたまたま辿り着いたロシア語のニュースサイトをDeepLで翻訳して読んでいる。すごいことだよ。

・2022.3.8

友人が映画監督になって、みんなで上映を見に行った夢を見た。パンフレットの一言一句を朝起きたときにまだ覚えていたことが忘れられない。わたしは夢を見るときは一人称目線で、だいたいカラーで、現実的な夢が多い。そのせいで夢で見たことを現実で起きたことだと誤って記憶してしまうことがある。夢の話がつまらないなんて誰が言ったのだろう、もっといろんな人と夢の話がしたい。

国際女性デー、いろいろな記事が出ているのを見て回っていた。Twitterにも書いたけれど、ELLEのクラーク志織さんの記事がすごくよかった。国際女性デーはなぜ「女性」を強調すべきなのか、背景にある反戦争について。自分自身も女性として生きる上で感じる違和感、これまでのことや今感じていることについて話す機会がたまたま多い一日だった。ここ数年で変わったこともあれば、変わらないこともある。わたしがいる場所が変わっていたとしても、そうでない場所がいくらでもあるということも知っている。自分に何ができるのか、も刻々と変わり続けているということも。

・2022.3.7

よくわからない不安に駆られたけれど、今世界で起きていること、これまで起きてきたことが自分の頭にぼんやりとしか入っていなくて、どのように意見や考えを持てばいいかわからないということが大きいのではないかと思い、ノートを取り出してあれこれ書き出してみたら少しだけすっきりした。自分の自信のなさや不安は、腰を据えて学ぶことでしか解決しないのかもしれない、という気もしている。これは2022年の課題。ノートに書いている間、ずっとDOMMUNEのテリー・ライリーを聴いていて、それもよかった。

・2022.3.6

新宿で収録の立ち合いへ。帰り道、ビューティーアポセカリーに寄ろうと新宿伊勢丹へ。ReStyleの横で欲しかったVironのポップアップがやっていた。パリ発のビーガンフットウェアブランド、駒沢で八百屋さんをやっているという人が接客してくれて、たのしくてアップルレザーのスニーカーを購入。リンゴジュースを作る過程で出た皮や芯がレザーになるなんてすごい。リンゴジュースが大好きだからなんだか嬉しい。

・2022.3.5

いただいたBeMEのcbdのフェイスマスク、気持ちよすぎて気づくと畳で寝てた。こういうとき畳の部屋があってよかった、と思う。引っ越すととしても絶対畳の部屋がほしい。

春みたいで気持ちがいい日、梅ヶ丘のラーメン屋SHIBASAKITEI+、今までで一番好きかもってくらいおいしかったな。羽根木公園は梅が満開、向こう側に抜けると見覚えのある景色で、昔おばあちゃんちに行くときによく車で通っていた道だった。車から降りたことはほとんどなかった気がする。懐かしい、と思わずお母さんに電話。亡くなったおばあちゃんだったらこういうだろうな、って言葉が自然に浮かぶことが多くて、近くにいてくれるんじゃないかなとやっぱり思う。歩いてたら古書瀧堂という古本屋があって、こういう街の古本屋さんが近所にほしいな、と思うような古本屋さんだった。レジ前に安藤晶子さんのポストカードが。

夜はかおるさんとのぞみんと晃生と4人で飲む、いつものメンバーの安心感。その後、道端で知り合った知らない夫婦も加えて公園で飲んだ。酔っ払って何を話したかはほとんど覚えていない。

・2022.3.4

ニュースやタイムラインを見ながら、ウクライナの悲惨な状況はもちろん、欧州における人種差別的な報道や、ロシア料理店へのヘイト、日本も核武装せよといった思想、戦争反対と声をあげる人に対して「意味がない」という人たちなど、あまりにも多くの気になることがあって朝からしんどくなってしまった。

『メイドの手帖』を見始めたけれどすごく面白い。DVから逃れてシングルマザーとなった女性の貧困について描いた作品。音楽もすごく良くって、いい意味で軽やかな部分もあって。原作はまた全然違うみたいだけれどそっちも読みたい。

・2022.3.3

サイトオープンの打ち上げをせんとさん・まりこさん・ゆめさんと。どの仕事も過程が大事だよね、といった話をしながら、このプロジェクトは本当に過程でのやりとりがすごくよかったなあと感じた。せんとさんにこの春初めてのチューリップをいただいてうれしくって、夜道で街灯に照らして写真を撮った。

2022.3.2

ウクライナ難民を日本が受け入れるというニュースを見て、入管問題がこんなにも大きな問題になっている日本でなぜ、と複雑な気持ちになる。こっちはいいけどあっちはだめ、ダブルスタンダードがまかり通るこの世界で注意深くいないとすぐそっち側に呑み込まれそう。学びが足りない。Etsyで買っていた犬の切手が届いた。それぞれ違った表情を浮かべる犬たちの顔と、読めない言語。海の遠く向こうでも変わらず犬は愛されているのだという事実に心が少しだけ安らいだ。

・2022.3.1

大学の頃に広報として関わっていたとある演劇のメンバーで久々に集まることになり、LINEグループが生まれた。あっという間に13年も経っている。わたしはそこでカツオと呼ばれていた。活きがいいという理由らしい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です